悪意の遺棄と別居の関係

悪意

悪意の遺棄とは

夫(妻)が一方的に家を出て、別居状態になってしまった・・・。

円満な話し合いの上での別居、もしくはDVを受けていたなどの正当な理由があれば別ですが、多くの場合は浮気・不倫が関係しています。

このような状態は単に別居ということではなく夫婦の同居義務違反となり、法律用語で「悪意の遺棄」と呼ばれます。

法律用語で言う悪意は本来は「ある事実について知っている」という意味ですが、悪意の遺棄については「相手を害する目的で」という一般的な意味であり、遺棄は遺棄罪などで使用されるように「捨てて置き去りにする」ことです。

つまり悪意の遺棄とは、本来は配偶者と一緒に住んで共同生活を送るべき義務に反して、配偶者を不当に放置する、ほったらかしにする状況となります。

具体的には、勝手に家を出ていく、配偶者を家から追い出す、生活費(婚姻費用)を渡さない、払わない等があります。

悪意の遺棄と別居、離婚請求

悪意の遺棄をした配偶者は有責配偶者となり、有責配偶者に対しては離婚を請求することができますが、民法770条に条文が記載されています。

(裁判上の離婚)
第770条
1.夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2.裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

逆に有責配偶者である場合は離婚を請求しても却下されます。

責任のある側からの離婚要求を認めることは法の正義に反するという考え方です。

しかし、現実では悪意の遺棄をしている側が離婚を要求している例が多く見かけられます。

浮気相手と一緒になりたくなった、今の配偶者とは別れたくなった、ということで一方的に別居状態にして浮気相手と一緒に生活し、配偶者には離婚を迫るという状況です。

ちなみに「婚姻関係が破綻していれば不貞行為にならない、離婚もできる、なので別居をすればよい」等の情報をネット等で見かけることがありますが、これは正確ではありません。

確かに「婚姻関係が破綻していれば離婚を認める」という判断基準・考え方が存在しますが、破綻は自分勝手に別居しただけで認められるものではなく、少なくとも「お互いに婚姻関係の継続意思がない」状況と判断される必要があります。

ですので、勝手に家を出て別居した時点ではむしろ悪意の遺棄に該当する可能性が高く、それが婚姻関係破綻と両立するのもおかしな話となってしまいます。

ネットで得た情報をそのまま自分の都合の良いように解釈してしまい、別居してすぐに浮気相手と同棲を始めてしまった人がいましたが、もちろんその後に同棲(不貞行為)の証拠を撮られることになりました。